ピチパンで行くパン屋の旅〜No.4(麹町)〜
自転車用のショーツ。通称ピチパン。
清く正しい自転車乗りの正装であり、ある種の反社会性も併せ持つスポーティーな服装である。
何かを得るためには何かを犠牲にする必要ある、というのは普遍的だ。
空気抵抗とサドルとの擦れや痛みを極限まで減らしつつ、一方で(特に男性の)タイツ姿というのは圧倒的に社会と対立的な存在である。まさにそうしたアンチテーゼとも言えるを概念をまとったウエアであると言える。
おっさんのピチパンは迷惑防止条例の半歩手前かもしれないが、女性のそれは真逆であるとサンプル画像とともに申し添えておきたい。
土曜日に(結果TSS300程度となる)そこそこ高強度の房総での練習会に参加した僕は、日曜日は都内をポタリングしようと決めていた。(というか度重なる登りの結果、筋肉が悲鳴をあげていた。20分弱の登りは5w/kg超だった)
なんていい響きなんだろう。文化というかカルチャーというのか、なんか良くわからないけどそんな良さげな雰囲気をそこはかとなく感じる。
どこへ行こうか。明確には決めず、とりあえず皇居方面に何も考えずに向かうことにする。桜田門を横目に見つつ、六本木通りへと入る。思い出したように、まずは渋谷のモンベルでサコッシュを調達。(追ってインプレなど)
結論としてサコッシュとして必要十分。コンパクトになるのが最大の利点。良い買い物。
渋谷まで来たし、気になっていたパン屋があるんだ。代々木八幡の365日。
行列必至との声を良く耳にする、最近Openした日本橋高島屋S.Cの中にも入っているというあれだ。
正直、本格的なパン屋のパンはどれも美味しい。というかまずいものなんて滅多にない。 みんなそんなことは心のどこかでわかっているはずだ。それでも並ぶのか。
どんなパンなのか見てみたい。それは少年時代のまっすぐな(99.9%エロい)欲望に似ている。生理的な欲求として、近いのかもしれない。
11時頃だったと思う。田舎くささを消しきれないような人間(=僕)には縁とおい、雑多なおしゃれさからは一歩落ち着き洗練された大人な街、代々木八幡。
その路地裏の一角にそのパン屋を見つけた。
正しくは溢れる人の列を見つけたのだった。。。
※参考画像
見た瞬間に心は決まっていた。「帰ろう」
一目散に井の頭通りへと入り原宿へ。表参道では洒落たピスト乗りたちを圧倒的な速度差でぶっちぎっていく。「見た目だけの雑魚が、、、」
完全無欠、ピチパンもっこりスタイルの僕は去り際に苛立ちながらそう呟く。
でもそんな僕を見る表参道女子の視線はどこか侮蔑を含んでいるような気がした。 表参道で息を切らすピチパンおじさん。その視線の答えは火を見るより明らかだった。
そんなこんなで皇居近くで気になっていた麹町にあるNo.4にお邪魔することにした。
王○のブランチとかいう番組で見て気になっていた。そうさ、僕は根っからのミーちゃんハーちゃんだ。
おしゃれ、、つうかでけえ店だな。というのが感想だった。無駄に敷地も広い。
店内の座席はほぼ人で埋まっていた。ピザ釜もあり、ランチメニューを提供しているようだった。一瞬迷う。でもわかっている。僕には勇気がない、ピチパン1人で滞在する勇気が。
お昼前ということもあり、概ねパンは揃っている模様。迷いつつも結局無難に走る癖のある僕は、ポップにある人気ランキングに素直に従うのだった。店内は女性や子供連れ、カップル、たまにお一人様もいるといった様子で思ったよりも気さくに使える気がした。いつかピチパンでも食事できることを願って店を出る。
結局4種類ほど購入し、さっそく早速モンベルのサコッシュに入れて意気揚々と帰宅したのだった。
買ったのは左上から時計回りに、塩パン、ビスケット、あんバター、エッグタルト。
まず塩パン。クソほどに美味い。塩が小麦の香りを立ててくれる。もっちりと食べ応えがある。
ビスケット。文句なし。うまい。スタバのビスケットを2倍ほど美味しくした感じだろうか。
あんバター。クソ美味い。フランスパンにあんバターというのが新鮮。かなりハードなパンのためちょっと食べにくいけど、これも良い。
エッグタルト。美味い。一般的な香港にあるようなパイ生地ではなく、パンを土台としたタルト。甘さは控えめでパイ生地よりも食べ応えがある。
僕は思う。ピチパンはやめて、おしゃれにピスト(ブレーキ有り)で東京ライドを楽しんだ方が勝ちじゃないか、と。表参道の女子の視線もきっと違って感じるはずだ。
そう思いつつも、僕はいつも通りピチパンでローラー台に乗ってしまうのだった。